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2010年5月19日 (水)

データで見る口蹄疫対策(2010年 宮崎) その11

昨日からようやくメディアもスリープ状態から復帰したようで、東京でもあふれるような報道がはじまっている。

ところで、赤松農水大臣は、きのうの記者会見

   「初動が遅れた」とか何とか、「やるべきことをやらなかったんじゃないか」とか、

   そういうことについては、私はないと、これは思っております。

と言っている。こんな発言が許されるのは、メディアがまだ寝ぼけている証拠だと思う。

Wikipediaによると、農水大臣は、次々と不祥事の起きる「呪われたポスト」なのだそうだ。

だから、まともな人はやりたがらないのかもしれない。

そもそもこのブログを開設したのは、口蹄疫の対策が遅れていることを、わかりやすく示す資料を

提供するためだった。メディアが機能を停止しちゃっているから、とりあえず個人でやってみただけだ。

メディアがいちおうは回復したので、そろそろデータの更新はたまに行う程度にしたいのだが、

さて、これから始まる政府の対策は、うまく行くのだろうか? 失敗すれば、たぶん日本全国に

広がってしまうだろう。

1.政府の対策案への疑問

今朝の新聞によると、10キロ圏のすべての偶蹄類家畜にワクチンを打って、全頭処分する、

というのが政府の方針のようだ。ホントにうまく実行できるのか見守りたい。

但し、「新たに牛4万頭、豚12万頭」という農水省の推計は、明らかに過小評価だ。

今後1週間の間に感染地域はさらに広がるだろうから、そんな数字ではすまないはずだ。

(これについては「その9」を参照してください。)

それにしても、今まで持ちこたえてきた現地農家にとっては、心の折れるような思いだろう。

(参考)川南町のムッチー牧場

ところで、新聞記事には、「家畜」としか書いておらず、野生動物のことが何も書いてない。

理論的には、半径10キロの「全ての偶蹄類」を処分しないと意味がないはずだ。

これについては「その8」で書いたのだが、コトが重大なので、農水省も小出しにしているのか?

2.やはり検査が遅れている

「その9」で、現地では獣医が不足しているために、検査が遅れている、という噂に触れたが、

きのう夜の農水省ニュースリリースを見ると、そのことが推定できる。

昨日は、5件の感染確認の発表があったが、そのうちNo.127-130の4件は、

  ・5/16に届出があり立ち入り、「翌日」検体を送付、5/18にPCR+確認、

となっている。検体を採取する獣医が足りていれば、当然5/16に検体を取って送れるはずだ。

また、その前の、きのう未明の農水省ニュースリリースでも、同様にNo.112-116の5件について、

  ・5/15に届出があり立ち入り、「翌日」検体を送付、5/18未明にPCR+確認、

となっている。

検査すらも間に合わないのに、ホントに対応できるのだろうか…。

3.国と県の情報隠し

きのうようやく、

  ・3/26から最初の症状(6例目)が始まっていたこと

  ・3/31に県が立ち入ったが、典型的な症状でなかったために見逃したこと、

などを農水省も認めた。しかし、このことを、農水省と宮崎県が共謀して隠蔽していたのは明らかだ。

農水省のニュースリリースでは、6例目について、「別の検査で3/31に検体を採取」したと

書かれているし、3/26から症状があったことは、農水省がOIEに提出したレポート以外、

これまで国内向けには公表されていない。

メディアはまだどこも隠蔽工作とは書いていないような気がするが、恥ずかしくて書けない

のかもしれない。何しろメディアは「事件全体」を隠蔽しようとしていたのだから。

「メディアのない社会」

5/16の日曜まで、事件の大きさに較べ、メディアはずっと沈黙してきた。

メディアに何があったのかは、良くわからない。

たぶん、中国に住んでいたら、こんな感じなのかな、と思ったりしていた。(住んだことないけど。)

ところで、近い将来のことを考えると、そもそも今のようなメディアはどうなってしまうかわからない。

今日はデータを作っていないので、こんなグラフでも見てもらいたい。

「新聞を読まなくなった日本人」(社会実情データ図録)

新聞は既に老人のメディアになっている。新聞がただちになくなるとは思わないが、

少なくとも10年後には今の新聞のビジネスモデルは完全に崩壊しているだろう。

民放テレビも雑誌も経営が苦しくなっている。今回の事件は、メディアが機能しなくなったとき、

どんなことが起こるかのシミュレーションだったのかもしれない。

(参考)「宮崎県の口蹄疫拡大プロセス」(Google Earth アニメーション)

(参考)発生状況の地図 google地図(hisaさん他)

(参考)「口蹄疫でなぜ防疫のための殺処分」

お知らせ>宮崎産の豚肉・牛肉・乳製品は安全です。

Kontan

コンタンです。(この写真は転載禁止です。) 

このブログは私の下僕が執筆しています。 リンクフリーです。

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コメント

>「初動が遅れた」とか何とか、「やるべきことをやらなかったんじゃないか」とか、そういうことについては、私はないと、これは思っております。

オソマツ、間違えた、バカマツ、いや違った、誰でもいいですが、神輿の上から途中で逃げ出した大臣です。担いだお役所の人たちのマニュアルに沿って、言われたとおりのことを忠実に正しくやったのですから、上の発言は100%正しいと思います。

この言葉が役人に言われた通りのたもうたのか、自分自身の言葉であるかで意味が違いますが、役所には「マチガイ」という言葉は存在しないのです。

ポッポさんが彼を更迭したものと受け止めたのですが、友愛精神(=同志、仲間を大切にすること)を発揮しているようですね。

ワクチンによる防疫対策ですが、むちゃくちゃに混乱しそうです。

接種してから免疫獲得まで2週間くらいですから、その間は今までどおりの状態が持続するはずです。
えびの市はワクチンを使わない、ということで、都城まで広がれば、完全にアウト。

万一搬出制限地域ですでに汚染が広がっていて潜伏期にあったなら、西都や延岡まで逝ってしまうでしょう。宮崎県が完全にやられてしまう恐れさえあります。

対策が強化されていると聞いて油断する、あるいはすでに疲れ果てている関係者の士気と集中心が損なわれてしまったら、どうなるのか。

野生の鹿の存在はシカトされているようです。

6例目の水牛牧場の周辺をグーグルアースで見ていたら、近くに4発エンジンの大型ジェット機の映像がありました。衛星写真であれば気にしませんが、航空機で撮影した画像であったならば、上下ですれ違っていることになります。これにはびっくりでした。

この水牛牧場の西北の山頂あたりに牛の放牧場があります。そこでは地面がむき出しになっています。

昨年、尾鈴神社を探していて牧場のフェンス沿いの道路に迷い込んだとき、白昼にもかかわらず、鹿だらけでした。私のブログに証拠写真があります。

beachmollusc さん。

ワクチンを打ったあとどうなるか、というのは国内では未経験なので、やってみないとわからないですね。

きのう夜のニュースを、見ていたら、東知事が「みんないっしょうけんめいやっているんだ!」と逆ギレしている
映像が流れていました。知事も疲労困憊でしょうから、まぁこの発言を責めるつもりはありませんが…、
でも、(現場でがんばっている方々のことを悪く言うつもりではありませんが、)今の現場は、旧日本軍の兵士が
満足な武器も弾薬も補給も受けずに、指揮系統も乱れたまま戦っているようなものだと思えてなりません。

今から政府がやろうとしていることについて、こんな例えを思いつきました。
  120cmのハードルを飛びそこなってしまった。
  おかしいな、10年前は飛べたのに…、とつぶやいてみる。
  (そのときのハードルが100cmだったことは忘れている。)
  これから再び飛ぼうとするとき、ハードルは180cmに上がっている…。

http://www.oie.int/wahis/public.php?page=single_report&pop=1&reportid=9235
農水省からOIEへの1週間ごとの経過報告が出ていません。
防疫担当がパニックになっているのでしょうか。

>今の現場は、旧日本軍の兵士が満足な武器も弾薬も補給も受けずに、指揮系統も乱れたまま戦っているようなものだと思えてなりません。

100%同じ意見です。

このままでは、首相の公約どおり「5月末の(ワクチン対策破綻による)決着、最低でも(宮崎)県外」となり、6月に退陣決定でしょうね。普天間問題よりも、こちらで引導が渡される予想です。

http://www.oie.int/wahis/public.php?page=single_report&pop=1&reportid=9235
1週間ごとの5番目のOIEに農水省から出された経過報告が出ていました。

前回報告後の5月16日までの55例が報告され、全部で(52から増えて)107例の時点での報告です。
1週間で倍増のペースが保たれている状態が明白です。次の週間経過報告では約200例となりそうな。

42番(通算83例目)のえびの市では5月13日に防疫処理が完了して、resolved解決となっています。マップでも終わったとしています。このまま、3週間発生がなければ清浄宣言が出るはずで、その時点で解決とされると理解していましたが、防疫(埋設)の完了時点で解決、というのは変ですね。埋設完了後、丁度1週間が過ぎたところなので、周囲に飛び火していないとはまだ宣言できないはずです。

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