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2010年9月 6日 (月)

データで振り返る口蹄疫対策(2010年 宮崎) その49 口蹄疫ベクターとしてのハエ

Ga018

Photo(Top): Galapagos sea lion (ガラパゴスアシカ) Isla Plaza Sur, Galapagos  (写真はクリックで拡大します。)

ハエが広域に感染を広げた可能性について、いろんな方が書いている。

筆者は家畜も昆虫も専門ではないので、内容について評価をすることはできない。

しかし、「その48」で書いたように、5月中旬の「一斉かつ広域」な感染拡大の説明として、

ハエが重要なベクター(vector:病原媒介体)だった、という説はたいへん魅力的に感じられる。

あくまでも、ハエはいろんな感染経路のひとつだと思うが、農水省はハエの影響を調査もせずに過小評価しているように感じる。

既に調査する機会は過ぎてしまったので、答えは出ないのだろうけど、皆さんはどう思っているのだろうか?

今回は、ハエ関与説のリンクを紹介する。

1.向本 雅郁 さん(大阪府立大准教授・獣医学) 産経新聞関西版、5/28

 --防疫体制をしっかりしていても防げなかった

 「ウイルスの媒体が、ハエやアブなどの昆虫となると、牛舎の構造上の問題がある。

 鳥インフルの場合は、防虫ネットを張っていたが、牛舎を完全に封鎖するのは現実的ではなかったのだろう」

 --空気感染の可能性は

 「空気感染だったらもっと一気に、同心円状に広がる。今回は、割と順番に南下している。

 媒体の可能性としては、野生動物か昆虫が大きいのでは

2.小林 睦生 さん(国立感染症研究所(東京都新宿区)昆虫医科学部) 国産まるかじりネット(5/23「日本農業新聞」)

あくまで推測とした上で、「口蹄疫の発生が拡大した状況を見ると、人の動きや風などではなく、

羽を持った昆虫の動きのように思える」と指摘します。中でも、ハエが関与している可能性が高いという見方です。

3.小河 孝 さん(農林水産省家畜衛生試験場(現・動物衛生研究所)九州支場)

「台湾における口蹄疫 日本とアメリカの対応戦略の比較」

アメリカ農務省家畜衛生・疫学センターは、1994年に「口蹄疫:ウイルス伝達様式の危険分類と発生源」

という膨大な引用文献・資料をまとめている。その内容を簡単に紹介すると以下のようになる。

口蹄疫ウイルス(FMDV)の感染源となりうる動物は99種類あり、そのうちの31種類は「非常に危険(High hazard)」、

50種類は「やや危険(Moderate)」、残る18種類は「危険は低い(Low)」と分類されている。

その危険分類は次のように定義される。

(中略)

「非常に危険」に分類される動物は、家畜としては豚、野生および外来性の鹿、リャマ、ヤマアラシ、人、

ダニおよびサシバエである。

豚はFMDVの重要な伝播かつ増幅動物で、空気伝播による発生に関与する。

鹿は、他の動物へのFMDVの伝播が認められる。

リャマも自然条件下で実験的にウイルスを伝播することが認められている。

ヤマアラシと人は、FMDVの機械的伝播の役割を果たしている。

サシバエとダニの類は、噛むことでFMDVを伝播し、長期間にわたるキャリアーになる

4.長野県伊那家畜保健衛生所ハエの季節がやってきました。特に厄介なサシバエを撃退しよう!!

雑食性のイエバエと異なり、吸血性のサシバエは内蔵構造が単純で体重が軽いため、

その飛翔能力は4km と言われています。

5.☆気ままにウロンコロン☆ さん丘の上の花束

牛がいなくなって人を襲うサシバエの写真が出ています。

6.村山 茂樹 さん(ハエの専門家)の一連のツイート

(5/13)

 5/13のClunioさんのハエと感染症防除にかかわる一連のつぶやき

 イエバエで10キロ程度の大量移動を示唆する報告があります

(6/10)

 口蹄疫ウイルスの生態学を牛、豚、イエバエ亜科(或いはサシバエ亜科)のハエを含めた四者系で考えてみたらどうなるであろうか

 さらにはこの四者系を家畜化以前のイノシシ、オーロックス(orスイギュウ)を代入した野生動物系に置き換えた

自然生態系で探求する試みも必要となるはず

 こうした口蹄疫ウイルスの生態学的な実態が解明されて初めて、先手先手と布石を打つ形での有効な対口蹄疫対策は

有効なものとなるのではなかろうか

  現在の世界の口蹄疫対策は、何かウイルスのみを凝視した視野狭窄の稚拙さを感じてならない

  蚊の絡む媒介系の研究では常識的な思考ですが RT @DanShio: 殺して放置した牛、豚が腐り、ハエ、虫による

ウィルス感染の範囲に留まらず、ご指摘の家畜化以前の野生動物系の検証やウィルス以外の検証は恐らく一般的にも

政府も私の周りのメディアも全く無知です。 

(6/11)

 イエバエ・ノイエバエ関連文献トランクいっぱい詰め込んで、口蹄疫封じ込め戦闘に旅立ちたし。されど我が方に兵無し。

 (人と車の往来に)加えるに、口蹄疫ウイルスを生態学の土俵に引きずり出して考えると、

どうも牛、豚、ハエ、ウイルスの四者系が臭い、というのが私の仮説

 イエバエは少なくとも一気に十キロ程度の障壁(海など)を群で突っ切る事が知られています。

これを何日かかけて繰り返せば用意に数十キロの移動は可能です

  この移動距離、厳密なマーキング実験ではないのですが、発生地の陸から10キロ隔てられた海上ごみ埋め立て地から発生した

イエバエが、大挙して対岸の陸地に到達した事例が知られています

 あくまでも強調しておきたいのだが、私の主張しているのはハエ媒介か、人媒介かの二者択一とか

どちらに重点を置くべきかなどといった下らない論争ではない

両者を組み合わせた総合制圧を組まないとイエバエ亜科のハエの生態から考えてどうにも危険極まりないのではないだろうか、

という提言なのだ。

村山 茂樹 さん「口蹄疫(村山先生所見)

イエバエ亜科の生活史をぐるっと辿ってみたところで、雌の成虫が生殖腺成熟の過程でどうやってタンパク質を獲得

していたかを思い出してみてください。涙、唾液、傷口や皮膚病患部から浸出する組織液、でしたよね。

この最後のところがポイントです。つまり、イエバエ亜科のハエ、端的に言うと、宮崎県辺りですと畜舎内ではイエバエ、

放牧地ではノイエバエにとって、口蹄疫の患部というのは絶好の卵巣成熟用のタンパク質摂取箇所であるはずという事なんです。

故に、口蹄疫発生牧場のイエバエ、ノイエバエの雌は高度に口蹄疫ウイルスで汚染されているはずなんです。

私はこの事を非常に危惧する。

7.現役養豚家 さん のコメント (10/07/09 beachmollusc ひむかのはまぐり さんのブログ)

ベクターとしてのハエについて気がついたことがあります。

ハエが集るところ、代表例は糞と思いがちですが、家畜のエサであるミルク製品や、エサが乳酸発酵し始めの頃たくさん集まってきます。

今日豚を見ててふと気がついたこと…ていうか、今までも見慣れた光景ですが…畜体の傷口によく集まります

びらんや蹄の取れた部分は血液やリンパ液…当然ウイルスも一緒に…がにじみ出ているため、なおのこと、ハエが集中します。

やはりハエ・サシバエの影響は大きいと思います。

その影響力は糞便を介する場合の何倍にもなるでしょうね。

同、beachmollusc さん のコメント

ハエ、サシバエ、などは栄養源と産卵場所を往復することを複数回繰り返すと思われます。

産卵してから栄養補給をして、また産卵する。感染した動物のびらんした部分などはハエ類成体の栄養源ともなるのでしょう。

また、乳酸発酵した堆肥はウジの栄養源でしょうね。

8.beachmolluscひむかのはまぐり さん (日向市在住の生物学研究者)の一連のブログ記事

■サシバエ関連

サシバエの飛翔力と口蹄疫の伝播」 (6/12)

サシバエは極めて飛翔能力が高く、長距離移動するし、動物を刺して吸血するということは

モロにウイルスを注入するということになる。道路沿いに飛ぶか、車内に入ってヒッチハイクすれば、

消毒ポイントを無視して都農から日向市くらいなら簡単に広がる可能性があるだろう。

口蹄疫の拡散パターンは牛と豚で異なる」 (6/13)

現地では小丸川を防衛ラインと見なして川岸の道路に消毒ポイントを設けていた。
各畜産農家は自主防衛に必死になっていた。

何故、地上の防衛ラインがウイルスの拡散を止めることができなかったのか、その答の一つは空気中の拡散であり、
飛翔する生物がベクター(運び手)になっていたと考えれば分かりやすい。

ハエやダニによる口蹄疫の伝播」 (6/14)

口蹄疫拡大、防疫対策停滞とサシバエ発生の関係」 (6/15)

このように10日以上の長期間、防疫未処置の農場が出現し、そこで堆積した家畜の糞にサシバエなどが大量発生することは

過去に例がないことだろう。そして牛を刺して感染を拡大させるという事が過去にないユニークな現象となったために、

過去の文献に報告事例もなく、疫学的な盲点となったのではないか。

サシバエの移動と口蹄疫の拡散」 (6/17)

サシバエが発生した農場で家畜の埋設が終わると、サシバエは新しい吸血相手を探して飛び回るだろう。

その飛翔距離について文献を調べてみて改めて認識したが、サシバエは分散能力が極めて高い。

そして、家畜が出す臭気を感知して接近する嗅覚をもっているので、孤立した農場があっても見つけ出すだろう。

以上のことから、小丸川を越えて5月下旬に一斉に牛舎で感染が広がったことにサシバエが関与していた可能性は

十分考えられるし、ワクチン接種圏の外で発生しているケースでも関係しているかもしれない。

サシバエの嗅覚に関する博士論文」 (6/17)

温暖な日には2回吸血し、冷涼な時は日に1回で、25度以上で温度が高いほど活発に吸血する。

メスのサシバエはありとあらゆる分解(腐敗)中の有機物(サイレージやコンポストなど)に産卵する。

動物の糞、特に発酵している植物性の物質が混ざった場合に産卵されることが多い。

サシバエのメスは産卵床を見つける時に嗅覚に頼る。糞の臭いだけで産卵を誘引する。

馬糞、牛糞に接触しないでも接近する。

牛舎におけるサシバエ対策」 (6/18)

サシバエによる病原性ウイルスの伝播」 (6/20)

口蹄疫ウイルスのサシバエによる伝播を考える場合、上の仮説のポイントで:ウイルスに汚染された血液が

サシバエの体内で消化されずに家畜や野生の偶蹄類に運ばれて吸血の際に伝染してしまう、

つまり、羽化した後でも、感染動物を吸血した状態で飛散してウイルス感染を広げる可能性を示唆している。

汚染堆肥の中などで発生していなくても、サシバエは口蹄疫ウイルスを拡散させる恐れが考えられる。

サシバエとWNVとペリカンの大量死の関係」 (6/21)

サシバエによる豚のウイルス病の感染実験」 (6/21)

■その他の昆虫

ヌカカは口蹄疫ウイルスを媒介するだろうか」 (6/22)

ヌカカの仲間が媒介する偶蹄類のウイルス病」 (6/23)

ウイルスの水平伝播と吸血昆虫-アブについて」 (6/26)

北ヨーロッパにおけるブルータング病の蔓延」 (8/4)

9.現地の方によるハエ発生の報告と噂

ハエ退治要望」 (5/12、内藤 逸子/川南町議)

殺処分前に「殺鼠剤とハエの卵を殺す殺虫剤」をまいてから、殺処分にかかってほしい。

そうしないと石灰を畜舎にまいて殺処分ではハエは生き残り空っぽになった畜舎から羽化して飛び回ることになる。

現に羽に石灰をつけたハエが飛んで来ている。と(県の)担当者に話をしましたが

石灰を丁寧にまいているのでとの返事です。 今ひとつ話がかみ合いませんでした。

ハエと蚊の対策急いで」 (5/29、内藤 逸子/川南町議)

最近ハエが増えた。羽の白いハエが飛んでくるとの話を聞きます。

蚊が最近夕方になると多いと感じます。尿溜や汚水から大量の蚊が発生しているそうです。この蚊の対策も急がれます。

ハエ退治の殺虫剤配布決まる」 (6/4、内藤 逸子/川南町議)

臭い対策のお願い」 (6/5、内藤 逸子/川南町議)

外で庭の草取りをしているとハエが多くてハエたたきを持ってハエをたたいて殺しながら草取りをしていたが

あんまりハエが多くて気持ち悪くなったとも聞きました。

早く口蹄疫止めたい」 (6/12、内藤 逸子/川南町議)

「ハエ」の異常発生で町民は震えています。牛につくハエは服の上からでも刺します。チクリとします。

エーッ蟻かなぁーと思うぐらい痛いんです。ハエは車や人に止まって移動します。

ばい菌の運び屋さんは「ハエ」と考えている方は多いようです。

どうせなら」 (6/15、「宮崎移住と果樹栽培」)

豚は牛と違って1農家の飼育数が多い。

その豚を埋めることができないから、死んだ豚をそのまま畜舎に置いておく。

そうすると ハエの大群が発生してそのハエが近隣に移動する。

どうしようもないウィルスの蔓延になる。

ハエの異常発生?」 (6/29、「宮崎移住と果樹栽培」)

ハエが多い。 限りなく、果てしなく群がってくる。

農業法人の事務所内にもこれでもかと、侵入してくる。

事務所外に置いているハエ取りシート(40cm×30cm)には

みるみるハエがくっついて、白地のシートが黒くなってしまう。

ハエ」 (6/2、mixi ひじりさん(川南町/サービス業)の日記)

みんなが口々に言う

「ハエが増えた。」

・・・・・・・・どうやら、今度はハエとの戦いとなりそうだ。

(おまけ)

粘着剤によるハエの防除」 (8/2、営業マンの放浪日記)

ハエ取りシート スーパーキャッチ!」 (11/2追記、べぶろぐ)

9/7追記

参考: 5月中旬の「一斉かつ広域な」南側への感染拡大の様子

(図はクリックで拡大。Google Earth 地図を含む図は転載禁止。)

農場の位置は推定によるもので、誤差があります。 その他の図は「その46」にあります。

Fig.1  1例目~94例目の分布(5/13発症まで)

Fmd_sheetb05s_2

「FMD_Sheet-B05.jpg」をダウンロード   (2100*1500)

Fig.2  1例目~130例目の分布(5/16発症まで)

Fmd_sheetb06s_2

「FMD_Sheet-B06.jpg」をダウンロード   (2100*1500)

Fig.3  1例目~160例目の分布(5/19発症まで)

Fmd_sheetb07s_2

「FMD_Sheet-B07.jpg」をダウンロード   (2100*1500)

Fig.4  1例目~196例目の分布(5/22発症まで)

Fmd_sheetb08s_2

「FMD_Sheet-B08.jpg」をダウンロード   (2100*1500)

このような感染拡大が起きた理由を、

 ・ 4/20からの移動制限により、農場内に畜糞、廃棄物が滞留→

 ・ 5月上旬から、ハエが大発生 → 一部が移動して広域に感染を拡大

 ・ 5月中旬から、広域に発症

と考えると、腑に落ちるのだが、確たる証拠はないので、もちろん思考実験でしかない。

しかし、いまのところ農水省も、これについての明快な説明はできないようだ。

(12/3追記) 「2004年高病原性鳥インフルエンザ国内流行地で採集されたクロバエ類

からのH5N1亜型インフルエンザウイルスの検出と分離」 (国立感染症研究所)

(2011/3/2追記)

竹中 淳 「畜産の感染症とハエの発生に対する防除
     -特に,養鶏の現状とその排出物の利用に関して-」
 より一部引用。

「chikusan_fly.pdf」をダウンロード (←著者の了解を得てこちらに置いています)

「昨年の宮崎での口蹄疫の発生後,イエバエとともにサシバエが異常発生しているという記載が,

 インターネット上で多く見られました.この種のハエが同疾病を伝播したとすれば,たとえば

 薬剤抵抗性の発達など,偶発性の高い何らかの理由で,密度依存的移動があったのではないかと

 推測されます.また,同種が多発した時に吸血していた家畜が処分されれば,その成虫は栄養の

 摂取ができなくなり,他の家畜を求め,普段の飛翔範囲を超えて移動した可能性も指摘されます.

 さらに,ピロスロイドなど忌避性を有する殺虫剤の散布が,感染に関与する昆虫の拡散を

 促進させた可能性も懸念されます.

 以上から,イエバエ,サシバエ,オオクロバエには,感染症の流行時に異常発生して分布を拡大し,

 同疾病を蔓延させる危険性があることが示唆されます.よって,家畜の感染症にハエが関与する

 ことを考慮し,その発病後の対策が見直される必要が指摘されます.」

「昨年末以降に韓国では,高病原性鳥インフルエンザと口蹄疫が併発しています.鳥類が後者の

 疾病に不顕性で,すでに渡り鳥やハエによって養鶏に感染しているとすれば,同疾病は,

 今期はオオクロバエ,春から秋にイエバエやサシバエによって,本国で再発することが危惧

 されます.よって,今後は,発病後の防除の見直しと共に、鶏舎での養鶏糞の処理と畜舎近く

 での鶏糞堆肥の施用に,ハエが発生しないよう対策が講じられる必要があります.」

ほかに、こちらによると、ブラジルや米国で,ハエ類の防除のため,IGR剤の家畜への経口投与が

行われていることが,ハエ類のIGR剤への抵抗性発達を促している可能性が高いそうです。ただし、

日本ではIGR(昆虫成長調整)剤のシロマジンに対する抵抗性発達の報告はなく、現在のところ

その薬剤は有効とのこと。*

お知らせ>宮崎産の豚肉・牛肉・乳製品は安全です。

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私がコンタンです。ハエと遊ぶのは好きです(この写真は転載禁止です。)

このブログは、当家の下僕が執筆しています。 リンクフリーです。

Hi, my name is Kontan. My servant writes this blog. This blog is link-free.

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コメント

コンタンさんの徹底的な情報収集とその取りまとめ記載に感服しました。

まだ見ていなかった情報もある一方で、私の方で見ていた情報の記載もれはありません。

昆虫類ベクターについて注意を促すため、農水省に出す意見書の付属資料集にされることを望んでいます。

家畜と野生動物について考えるときにも、ダニやアブ、サシバエなどがベクターになるはずです。

空気中をウイルスを含むエアロゾルが拡散する場合と汚染昆虫が飛翔・拡散する場合は、
現象としては似たようなものであって、受動的な拡散でしょう。ただし、単純拡散は希釈効果が強いのに対し、
昆虫の場合は揮発性の化学物質を行動指標として受容するはずなので、ピンポイント攻撃ができます。

ヌカカみたいに極めて小さい昆虫でもブルータングウイルスを媒介するベクターになります。

それに比べ、サシバエは桁違いに大きいし、ウイルス血漿をおこしている家畜から吸血する場合には唾液腺に、
ウイルス汚染が起こっている堆肥から発生した場合には体表にウイルスをまぶした状態で出てくるはずだし、
雌雄とも吸血する虫です。しかも大量発生する虫です。

これだけ状況証拠があることに対し、ムシはムシと言うのであれば、科学的な思考が存在しない頭脳の持ち主であると評価せざるを得ません。


いえばえとさしばとの駆除方法、忌避方法はちがいますが、おおむね、牛は、さしばえ、豚は、いえばえが多いと思います。
豚の場合、出産直後のいえばえ(ときに、きんばえ)が多いですが、毒性とかポストハーベストを気にしているようですが、

サシバエは、畜産施設の中またはその周辺において、かなり生息数の多い唯一の刺咬性かつ吸血性のハエです

サシバエは、肉牛の肥育農場、乳牛の運動場及び厩舎でしばしば大量に発生します。
サシバエは日のあたる戸外を好みますが、一部は舎内に入り、繁殖します

サシバエは、しばしば戸外のサイレージ、腐った乾草や床敷と混ざった堆積した糞尿を発生源としています。
サシバエはまた、舎内の敷き藁を施す子牛のペンや、戸外の子牛用のハッチからも発生します

サシバエは、時には鶏舎内の、こぼれた餌を含む糞尿中にも発見されます。
しかし、このハエは、基本的には戸外型の衛生害虫で、戸外で活発に家畜を吸血します。

http://www.iptsusho.com/yuuki/stable/stableflytrap..html

http://www.flycontrol.jp/species/stablefly/jp/index.shtml

ノバルティスの薬品を牛舎の壁に塗り、壁に光を当てると、明るいところに、はえが泊まり、駆除できる可能性があります。

牛が舐めないように、気をつけないとだめですが、(毒性が強いです。)


朝日新聞(9/6) http://mytown.asahi.com/areanews/miyazaki/SEB201009050021.html
「種牛殺処分の補償金、国が却下 農家、冷ややかな見方も」

「口蹄疫(こうていえき)の感染拡大に伴い、県所有の種牛計50頭が殺処分されたことに絡み、県が国に対し、
 この50頭分の手当金(補償金)を求め、国から断られていたことが関係者の話で分かった。」

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制度のことはよくわかりませんが、何だかなぁ…。


所有者は県で、借り入れ管理運営者は事業団のようです。 所有者が行政機関では、だめなようですね。
法的にはどうなんだろう。 裁判所に聞きいてみるしかなさそうです。 県の種牛は県民財産ですから。
県行政には、代理請求権はありそうな気もしますが。 県民の方には、県への管理指導での過失に関して
民事損害賠償請求権もありますし。頭が痛い。 

感染拡大の昆虫のかかわりですが。
ワクチン接種圏内でも、ワクチン接種開始まで、発症確認されていない所も多数あったことですし。
どのような昆虫類の防御をされておられたか、気になるところではあります。
また、周囲で感染確認されても、確認されていない所も出てきておりますし。
事業団の周囲は、時間がたってからの感染確認が多くありますし。
6月25日の全感染確認施設の埋却後は新たな発症は、7月4日まで、出てませんし。 検証は難しいですね。
当時のイエバエ等のサンプルが多数冷凍保管されているなら、検査での可能性もありましょうか。 
 
ハエは卵から成虫までに、10から14日ほど要するようですので、
感覚的にハエが増加したと認識したのが、5月下旬ごろなのでしょうか。
5月25日ごろの成虫は、5月10日から15日ぐらいに産卵されたものとなる様な感じですね。
6月中もハエの増加は見られたのでしょうか。 

ただ、糞尿の処理は、農家さんは専門ですから、通常からなされていらっしゃる事です。
今回のハエの増加は、何でしょうね。


togetter 「朝日新聞・視点 某名誉教授の口蹄疫をめぐる発言について」
http://togetter.com/li/47716
口蹄疫の「トンデモ論」について、「何とかしろ」という声がたくさん出ている。

ちゃんと反論した方がいいとは思うけど、口蹄疫について、畜産業の背景から
一般の人に説明しようと思ったら、とても短い記事では説明しきれないだろう。

世の中で話題になったことに、トンデモ論が付いて回るのは止められない。
有名税のようなものだ。

「地球温暖化」などは、もともとの命題が検証不可能なこともあって、山のように
トンデモ論が出回っている。

で、わざわざ研究費を付けて 「地球温暖化懐疑論批判」 を出版したりしてるけど、
http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/sosho ←こちらで全文ダウンロードして読むことができます。
でも、一般の人には、こちらはほとんど知られていないと思う。

実証より信仰のほうが簡単だ。 だから文明が進んでも呪術はなくならない。

(参考)「私たちにできることはなんでしょうか。ののしって鬱憤晴らしをすることではないですね。」
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/9313d4ad35ded093eb648b60cd7209dc


医学ではなく、文化人類学の分野ではないだろうか。と、思うことしばしば。 

どの視点でとも関係もいたします。
http://phi.med.gunma-u.ac.jp/flu.pdf

 温暖化には、化石燃料の消費ともリンクされます。この夏のような猛暑が続けば、エアコンでの日中発電を担う
火力発電所の発電量が最大になります。  化石燃料の消費を制限することは、現代の快適な暮らしを制限することにもなります。
リスクとベネフィットの折り合いの問題が。


蝿のベクター説は、可能性が大きいので、生きた蝿、家はえ、金蝿、刺し蝿を捕まえて、ウイルス自体か、抗体反応か、しらべてほしい。

豚は、糞食をするので、豚糞も調べてほしい。(こういう疑いのあるものを、きちんと、白、黒させてほしいですね)

寝床のおがくずなども、痒い傷口についた、ハエからのウイルスを、寝床に撒き散らしているかもしれません。

豚は、出荷停止が続いたので、豚舎の状況がつかめないが、豚の成長の早さからして、落ち着いて育つ状況が、どこにもないので、
満員電車生活は、かわいそうに思います。


9/6, 9/7, 9/8 に、6例目水牛農場のHPが更新されて、「口蹄疫の疫学調査に係る中間的整理(概要)」(8/25)
に、虚偽の記述があると反論しています。

「なぜ陥れるような報告をするのか」(9/8)
http://www.caseificio.jp/cgi-bin/webpat/document/ciro/2010/090801/index.html

>【よだれ・口内炎・乳房の皮膚に一部剥離があった】こんなことはありませんでした
>だって家畜保健所の3名の職員さん!貴方達、全頭柵に入れて一緒にチェックしたじゃないですか!
>
>【これは県がなぜ検体を東京へ送らなかったか】という指摘への言い訳です、
>県がなぜ検体を東京へ送らなかったか?
>事実はわたしのホームページが無くなる最後に報告するかもしれません」

「家畜保健衛生所の若い職員はどう思っているのだろう?」(9/7)
http://www.caseificio.jp/cgi-bin/webpat/document/ciro/2010/090701/index.html

>【3月20日に死亡した2頭を処理業者にトラックで運んだ】 と報告していますが
>
>【死亡した、、、、って】 怪しさ極まりない、、、、そんな書き方したら、、、
>
>【水牛】は牛ではないので【と殺場】は受け入れてくれませんでした。
>国と県と長く交渉をしましたがどうしてもダメだと、、、「薬殺して産廃処理しかありません」言われました
>
>生まれたオスは種牛として残す以外はなんとか飼い続けていましたがいよいよ【えさ代】の負担も大きくなり
>2009年の12月に9頭のオスを【薬殺】  産廃業者を自ら選び運びました
>
>2010年の3月20日にも2頭のメスを【薬殺】をして運びました
>この2頭は妊娠障害で2009年の8月に【とんぼ】といわれるホルモン治療をして
>【これでダメなら薬殺しましょう】と言われていました

ちなみに、「口蹄疫の疫学調査に係る中間的整理(概要)」(8/25)
を読みたい方は、農水省HPから、
  「口蹄疫に関する情報」→
  「これまでのプレスリリース・その他の情報」→
  「口蹄疫疫学調査チーム関係・口蹄疫の疫学調査に係る中間的整理(概要)」
とたどると、読むことができます。
(あまり重要ではないので、わかりやすいところに置いてないのでしょう。たぶん…。)


9/8の東国原知事ブログ http://ameblo.jp/higashi-blog/day-20100908.html
「・・・・・・これは余計な話だが、口蹄疫が無ければ恐らく2期目をすんなりやっていた・・・・・」

単なる妄想ですが、
「口蹄疫の何事かが今後発覚するかもしれないので、すんなり2期目に出られるかどうか…」
という意味だとしたら…?


事業団の内部留保が公表されたら、種牛の補償が必要かどうかが良く判るんじゃないでしょうか?
知事の発言は、あれだけの被害で、県の財政もアップアップになってしまい、このまま2期目をしたら
辞める時は、非難轟々で辞めるはめになりそうだから・・と、言う意味に聞こえました。
(私の妄想です。)


http://ukpmc.ac.uk/articles/PMC2154467;jsessionid=9E3FE99E8D36001E31270294D680FD94.jvm1

私には、内容がよくわかりませんが、口蹄疫ウイルスの遺伝子変異について、書いてあるのか?

疫痕について、写真判定ができれば、感染後、半月くらいの牛の発見ができないのでしょうか?


http://jp-spf-swine.org/All_about_SWINE/AAS/11/11_2-12.pdf

このレポートによれば、汚染肉が、原因説が66%あり、ハエの可能性は、1%と書かれているが、牛は、肉を食べないし、納得はいかないのだが。。。


念のためコメントしますが、
上のりぼんさんのコメントは、1870年から1993年までに発生した「初発例」のうち、
原因解明が行われた71%の原因ついて述べたものです。

初発以降の感染原因について述べたものではありませんので、誤解なきように。


第6回口蹄疫対策検証委員会の概要(9/10)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/gaiyo6.pdf

またも、誰が考えてもわかるようなことばかり…。


第6回口蹄疫対策検証委員会。。。こんな意見、会議開くまでもない。。どちらかというと、血液検査、スワブ検査の生の情報を発表してほしい。


こちら、初めてコメントします。当ブログでは、既に紹介済み(リンク先として)ではありますが、えびのの和牛繁殖農家のCowboyと申します。
幾度か、こちらへ、お邪魔はしておりました。そして、図やグラフ等を駆使し、明解な解説をなさっておられるコンタンさん(の下僕?)には、頭が下がります。実は、こういうグラフ化などの必要性を感じ、自分でもやりたかったのですが(着手はしたのですが)、当ブログを拝読させてもらい、「これには勝てない。や~めた。」となった次第です。
ところで、ハエのベクター説ですが、当初の感染に係った可能性は極めて高いと思いますが、後半(ワクチン接種後くらい)に他の地域に広がらなかったことを考えると、少し、納得がいきません。サシバエがヒッチハイクをしたなら、何故、感染がさらに、爆発的に広がらなかったのか。また、そのハエを食用としている鳥類は、ベクターとならないのか。
私は、ネズミがベクターとなっている可能性は無視できないと考えています。飼料倉庫には、必ずと言って良いほど、ネズミがいます。疑似患畜が見つかり、殺処分を開始する前には、そのネズミたちは、他の農場へ移動している可能性があります。大勢の作業員がうろうろして、消毒などを行えば、やがて、ネズミは、近くの農場へ逃げ込むかもしれません。
NOSAI獣医師から、「都城市では、殺鼠剤を置いた」という話を聞いたことがあります。これは、ネズミがベクターとなりうる可能性を否定できないから行った措置と考えられます。


Cowboy さま。
現地は、心配された再発もなく何よりです。

「牛(と餌)の消えた農場から、ネズミが移動して感染を広げているのでは」
という意見は、いろんな方が書いていましたが、実際の防疫対策で、
ネズミ対策がどの程度行われていたのかは、良くわかりません。

ただし農水省も、ネズミやゴキブリ、ハエなどが、「近隣の」伝播を起こしている
可能性はある、としています。

私がここでハエだけをとりあげたのは、農水省が「遠距離の伝播」には
ハエは関係ないと断定していることに、何となく納得できないからです。

また、仰るように、ハエがベクターだとした場合にも、いろいろと疑問点が
出てくるのも確かです。それについては、さらに細かく仮説を立てることも
できるでしょうが、検証されるあてのない仮説だけを精密にしてもしょうがないです。

それにしても、よく分からないのは、消毒だけでは感染拡大が防げていないことは、
5月の時点で明らかだったと思うのですが、なぜ誰も、その原因をフィールドで
調査しようと思わなかったのか? ということです。


9月2日の件、お気遣いありがとうございます。
うちから、目と鼻の先でしたし、市役所の畜産課から、「十分な広さの埋却地はありますよね。」という問い合わせが近所の同業者にあったり、掘削用の重機が搬入されたり。

「5月の時点で、消毒だけでは感染拡大は防げないということは明らかだった」というのは、ほんのごく一部の人間にしか当てはまらないと考えます。
連日の口蹄疫の疑似患畜発生や殺処分・埋却の遅延の報、消毒徹底・不要不急の外出自粛の要請などで、少なくとも畜産関係者は、まず、出歩けない事情がありました。畜産関係者にフィールドでの調査は、もともと無理かもしれませんが、一般人よりは、その責務があるやも。
県職員も、市町の職員も家畜防疫員も、殺処分、埋却処分に追われ、その地に足を踏み入れることすら、悪夢と思っていたでしょう。
今となっては、「したくても、気付いていても、誰もできなかった」という事実しか残っていません。
しかし、少なくとも、調査(初動時の積極的サーベーランスも含み)のためだけに足を踏み入れる専門家集団(殺処分には加わらない)が、今後は、組織される必要があることは間違いないと思います。
そのときは、家畜防疫員、獣医師以外にも、小動物や鳥類、昆虫、家畜感染症の専門家も加わるべきでしょう。


ねずみの移動についてですが、牛舎のことは、わかりませんが、都会で、地下鉄工事が始まると、一斉に、移動しますし、こんなにたくさんのねずみがどこに居たのと思うほど、たくさん発見しますね。
くまねずみなのかどぶねずみなのか、ねずみの種類で、生息エリアがちがうようですが、くまねずみが、牛舎には、多いのでしょうかね?
また、くまねずみは、壁も登りますし、結構、器用に、移動しますね。

我が家は、豚のえさ(乾燥ペレット)に、ごきぶりがやってきますけど。。


農村部の牛舎だと、クマネズミ、ドブネズミのほかにも、
ハツカネズミ、ハタネズミ、アカネズミなどもいそうですね。

ちなみに牛舎とは関係ありませんが、近年、都会ではドブネズミに替わってクマネズミが増殖しています。
いままではビルへ適応していたのですが、さらに最近は、住宅地にも進出してきています。

ネズミなんて(都会では)昔のはなし…、と思っていたら、どうも、そうではありません。
感染症と似ています。


口蹄疫対策検証委員会における「これまでの議論の整理」が公開されました。
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/soumu/100915.html

想定内とはいえ、やっぱりがっかりです。


ムッチー牧場 さんが、ブログで怒りを爆発させている。
http://green.ap.teacup.com/mutuo/305.html

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