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2010年9月 6日 (月)

データで振り返る口蹄疫対策(2010年 宮崎) その48 5月22日まで

Ga072

今回の図表(pdf)はこちらからどうぞ。

Photo(Top): Black striped salema (クロスジガラパゴスイサキ) Cabo Marshall, Isla Isabela, Galapagos  (写真、図表はクリックで拡大します。)

「0523_FMD.pdf」をダウンロード

今回は、5/14~5/22の発症(5/23の感染確認)までの状況を振り返る。

1.発生状況の推移

頭数は7/16農水省公表の頭数。当初の公表値とは少し変わっている。

Fig.1-1  5月17日(月)の状況 :126例目まで感染確認

0517_fmd

Fig.1-2  5月20日(木)の状況 :159例目まで感染確認

0520_fmd

Fig.1-3  5月23日(日)の状況 :193例目まで感染確認

0523_fmd

この時期は、今回の感染の発生ピークであると同時に、感染の範囲も大きく広がった時期にあたる。

感染数が指数的に拡大した一方、派遣獣医師はずっと100名規模で維持されたため、

殺処分の遅れはさらに顕著になった。(また5/19, 5/22-23の降雨のため、殺処分はさらに停滞した。)

(殺処分数、獣医師数のグラフは「その45」参照)

5/14の畜産改良事業団の発症(5/15感染確認)の頃から、感染区域が一気に南側に拡大した。

5/17は、感染確認日基準での発生ピーク。15件の感染確認があったが、

うち7件が大規模な養豚農場で、1日で29,784頭(当初公表数28,454頭)の擬似患畜が増えた。

5//17に、政府の口蹄疫対策本部(本部長:鳩山由紀夫首相)、及び宮崎県庁内に現地対策チームが発足。

東京での報道解禁。

5/18に、宮崎県が「非常事態宣言」。

この日の牛豚等疾病小委員会で「ワクチンの使用について検討すべき時期」との意見。

5/19に、政府の口蹄疫対策本部が、ワクチン接種の実施を決定。(接種開始は5/22)

補償内容について地元から反発も。

5/21に、国はワクチン接種により処分した牛、豚の全額補償(時価評価)を発表。

これを受け、地元市町の首長、知事がワクチン接種に合意。

5/21に、避難中の種牛の1頭「忠富士」が感染確認。(翌日殺処分)

5/22に、知事は畜産改良事業団の種牛49頭の殺処分を行っていないことを明らかにし、これについても

特例による救済を国に求めた。(その後5/28に1頭が発症し、5/31までに全て殺処分された。)

2.発生状況の分布

(図はクリックで拡大。Google Earth 地図を含む図は転載禁止。)

農場の位置は推定によるもので、誤差があります。 その他の図は「その46」にあります。

Fig.2-1  95例目~130例目の分布(5/14~5/16発症)

Fmd_sheeta06s_2

「FMD_Sheet-A06.jpg」をダウンロード   (2100*1500)

Fig.2-2  131例目~160例目の分布(5/17~5/19発症)

Fmd_sheeta07s_2

「FMD_Sheet-A07.jpg」をダウンロード   (2100*1500)

Fig.2-3  161例目~196例目の分布(5/20~5/22発症)

Fmd_sheeta08s_2

「FMD_Sheet-A08.jpg」をダウンロード   (2100*1500)

感染区域が、南側の広い範囲に拡大した。(後述)

ルピナスパークの東側エリアで、またもや養豚農場の集中発生があった。

GW頃の集中発生と同様、牛農家より先(または同時期)に発生していることから、

豚農場を巡る人為的要因が疑われる。

北側(都農町)については、散発的に発生が起こっていた。

後から見れば、これが、指数的増大の初期段階だったことは、「その29」参照。

注:「その46」にその他の図を掲載しています。

3.累計の殺処分対象頭数と処分状況の推移(1例目~193例目まで:5/23感染確認ぶんまで)

Fig.3-1  累計の発生件数

0523_fmd_1

Fig.3-2  累計の殺処分対象頭数

0523_fmd_2

Fig.3-3  累計の処分状況の推移(牛)

0523_fmd_3

Fig.3-4  累計の処分状況の推移(豚)

0523_fmd_4

4.南側への感染区域拡大

5/14頃から、急に、一斉に、川南町の南側へと感染区域が広がった。

潜伏期間を約1週間とすれば、この感染拡大は、5/7頃から急に始まったことになる。

なぜ急に範囲が拡大したのか? そしてなぜ、それまでは広がらなかったのだろうか?

当時私が思ったのは、5/4~5/8にかけての未処分の家畜(特に豚)の急増により、

ウイルス量がある「しきい値」を超えたために、5/7頃から急に感染が起こりやすくなり、

ちり、昆虫、鳥などによる伝播が起こったのでは?ということだ。

しかし、「その47」で示したように、感染の急増は、もっと早い時期(4月下旬頃)に起こっていたと思われる。

この想定はどうやら違っていたようだ。

獣医師の専門家の多くは「長距離の拡散は、人や車によって起こされた」と見ており、

農水省もこの見解をとっている。

感染が、北側よりも南側を中心に広がったことも、北側よりも南側の方が、人の移動もモノの移動も実際に多いこととマッチしている。

しかし、この想定には難点がある。

a.遠くへの感染が起こりやすくなったとすれば、近くへの感染の拡散は、さらに起きやすくなったはずだが、

それを示す明確なデータはない。

b.かなり広い範囲に、一斉に広がるような人為的な要因、は考えにくい

c.それ以前に範囲の拡大が起きなかった説明が難しい

この「一斉に拡大」は、今回の流行でももっとも特徴的な現象だ。

証拠はすでにないので、検証は不可能なのだが、これについて、

「長距離の伝播も、ハエが関与しているのではないか」という意見を述べている方が何人もいる。

ハエの急増は、この時期から起こったことなので、仮説として魅力的に思える。

これについては、次回に書くつもり。

(ちなみに、農水省の見解でも、「近隣への伝播」の要因としては、飛沫核、昆虫や小動物などによる

 伝播の可能性もあるとしている。)

9/7追記)南側への拡散でもう一つ特徴的なのは、「圧倒的に大規模な牛農場」での発生が多いことだ。

下図は、農場の規模、経営、発症日の関係のグラフ(「その47」と同じもの)。

「100827_kibobetsu_fmd.pdf」をダウンロード

Fig.4-1 川南町の南側(牛)

100827_kibobetsu_fmd_2

Fig.4-2 川南町(牛)

100827_kibobetsu_fmd_1   

両者を比較すれば一目瞭然だが、この南側の拡散では、数百頭~1,000頭以上の大規模な牛農場での発生が多い。

地域には、小規模な牛農場も多くあったはずなので、これも、昆虫などのランダムな攻撃と考えると腑に落ちる。

人や車が運んだとすれば、数の上で多い小規模な農場にも、もっと発生したのではないだろうか。

(但し、大規模な農場の方が人や車の出入りも多いので、厳密な比較は難しい。)

5.飼料運搬車

感染農場に入らざるを得ない外部車両として、飼料運搬車による感染の関与を疑う人は多いようだ。

口蹄疫の疫学調査に係る中間的整理」によると、

・西都市(283例目)及び日向市(284例目)については、児湯地区の発生農場と同じ飼料運搬会社の人・車両が、

 その発生農場への運搬と同日または連続した日に使用されたことが確認されていることから、

 この車両によりウイルスが伝播、感染した可能性がある

として、飼料運搬車による感染を想定しているが、ほかの例では、飼料運搬車が関与した可能性は

どのように検証されているのだろうか?

飼料運搬車による感染があったのか、なかったのか。

また、あったとすれば、それはどのように起こったのか、なぜ消毒で防げなかったのか。

今後に向けて究明しておくべき課題のはずだ。

青ナンバー車であれば、運転記録を調査することにより、当時の状況を把握することができる。

農水省、宮崎県による、調査を期待したい。

9/7追記6月21日に、配送車など「畜産農家に車両で訪問する場合の防疫措置について」(pdf)

が、農水省でとりまとめられたが、これ以前には、どのように指導されていたのだろうか?

6.検査が追いつかなくなる

Fig.6-1  292例の全データxlsファイル:「その42、44」にアップしたものと同じです。)

「100716_FMD_Miyazaki.xls」をダウンロード

このエクセル表で、「通報日」から「感染確認日」まで2日以上かかっている例が、5/15頃から目立ってくる。

(表で「色のずれ」のある事例)

個別の事例は農水省HP、宮崎県HPの擬似患畜情報を見るとわかるが、通報の「翌日」に立ち入りする例が多くある。

感染の急増に、検査態勢が追いつかなくなってしまった様子が伺える。

(追記) 216例目(A牧場「児湯第四牧場」)の通報の遅れ

8/5の報道記事によると、216例目農場(5/23ワクチン接種、5/25通報、5/26感染確認)では、

5/21に感染疑いに気づいていたが、5/25まで報告を行わなかったとのこと。

「5月21日朝、牛舎の見回りをしていた農場主任らが大量のよだれを出している牛数頭を発見。

 この牛舎では直後に従業員の出入りが禁止された。」

A牧場は、宮崎県内に15の直営牧場があり、うち9農場で擬似患畜が発生した。

それぞれの位置は、こちらのファイル参照: 「a_farm.xls」をダウンロード   

(144例目、273例目については推定なので違っているかも。)

A牧場では、地域の農場全体を1つの農場のようにして、牛や従業員を移動しながら運営していた、とされる。

面白いのは、216例目では育成牛が母牛の3倍いて、227例目では子牛が母牛の3倍いることだ。

それぞれの農場が、地区全体の「育成牛」「子牛」を担当しているのだろう。

お知らせ>本日の図表は、pdfを含め、無断転載を許可します。

      但し、 1.引用元の表記をお願いします。 2.無断での改変は厳禁です。(サイズの変更はokです。)

お知らせ>宮崎産の豚肉・牛肉・乳製品は安全です。

データは、農水省、宮崎県、OIEの公表データをもとに、個人的に集計したものです。

誤り、疑問点などありましたら、コメントをよろしくお願いします。

Kon_sanma

私がコンタンです。きのうは地元の最大のイベントでした。(この写真は転載禁止です。)

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コメント

本日から「清浄国」認定のための抗体・目視検査開始
朝日新聞 http://www.asahi.com/national/update/0906/SEB201009060004.html

「口蹄疫「清浄国」目指し、抗体・目視検査開始 国・宮崎」

「 家畜の伝染病、口蹄疫(こうていえき)の問題で、国と宮崎県は6日、一部の国や地域以外で停止中の牛肉などの輸出再開に向け、
 国際獣疫事務局(OIE)から口蹄疫の蔓延(まんえん)していない「清浄国」の認定を受けるため、
 県内で無作為に抽出した牛農場150戸での抗体検査と目視検査を始めた。

  県では、口蹄疫の終息を目指す段階で発生農場から半径3キロ内で抗体検査を行い、異常がないことを確認しており、
 今回の検査はそれ以外の農場が対象になっている。

  県によると、農場の規模に応じて、1農場あたり全頭~30頭を検査する。9月下旬までに終え、
 異常がなければ、国は10月上旬にもOIEに認定申請書を提出する方針という。
 早ければ来年2月のOIEの科学委員会で認定の可否が判断される。

  この日は、県内各地で検査が始まった。6月中旬に口蹄疫が牛農場で発生し、約230頭が殺処分された同県国富町では
 午前10時過ぎから、白い防護服姿の県家畜保健衛生所の家畜防疫員らが農場に入り、
 牛の口の中や蹄(ひづめ)などを一頭一頭目視検査。続いて抗体検査のため血液を採取した。

  同町では現在、牛約7千頭、豚約1万3千頭を飼育。検査対象は2農場という。」

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