« 移動制限区域とワクチン接種区域 | トップページ | データで振り返る口蹄疫対策(2010年 宮崎) その51 埋却地の問題 »

2010年10月18日 (月)

データで振り返る口蹄疫対策(2010年 宮崎) その50 都農町

Gal_046

今回の図表(pdf)はこちらからどうぞ。

Photo(Top):  Isla Bartolome, Galapagos (バルトロメ島/ガラパゴスカッショクペリカン/ガラパゴスアメリカグンカンドリ)

「101018_Tsuno.pdf」をダウンロード

今回は、都農(つの)町での感染拡大と終息について振り返る。

1.都農町の農家数と飼育頭数

4/29に宮崎県が公表した数字(「100429_Kosuu.pdf」をダウンロード )(おそらく2010年2月の数字)によると、

都農町での農家数と飼育頭数は下の表のようになっている。

101018_tsuno06_3 

一方、ワクチンを含めた最終的な殺処分数(読売新聞調べ)は、

農場数193、頭数16,207(全ての合計)となっている。(戸数がだいぶ少ないが、理由はわからない。)

この頭数には山羊や羊、イノシシなども含まれるので、牛と豚の正確な数字はわからないが、

とりあえず推計値として、

  ■牛飼養農家 185戸、 牛  4,000頭

  ■養豚農家    6戸、  豚 12,000頭

  ■その他     2戸、 その他 207頭

として、以下の話を進める。

(11/19追記) 橋田 和美 『畜産市長の「口蹄疫」130日の闘い』(書肆侃侃房)によると、

都農町のワクチンを含めた殺処分頭数(7/18)は,

牛 4,828頭、豚 11,301頭、その他 78頭、合計 16,207頭 (農場数は不明)

101018_tsuno07

2.発生例一覧

101018_tsuno01

元データ(xls)はこちら: 「100716_FMD_Miyazaki.xls」をダウンロード 「市町別」タブを開いて下さい。

右端の「処理日数」のバーチャートを見てわかるとおり、

都農町では、おおむね素早い殺処分が実行されていた。

感染確認から殺処分まで1週間以上を要したのは3例(No.247, No.249, No.251)しかない。

ただし、この3例の頭数が多かったわけではない(牛13頭、牛5頭、牛26頭)ので、

おそらくは埋却地の確保に苦労したのだろう。

マップ(後述)を見ると、No.247とNo.249は、市街地の近くにあることがわかる。

下のグラフは、擬似患畜頭数の推移。

101018_tsuno05

グラフのの上端が全頭数(推計値)。

牛も豚も、おおむね45%が擬似患畜として殺処分。残り55%がワクチン接種後に殺処分された。

3.発症日と規模

101018_tsuno02

もともと肥育農家6戸、養豚農家6戸しかなく、数の上ではほとんどが小~中規模の繁殖農家。

No.6, No.1も山の中にある農場で、都農町の最初の発生はこの2つでいったん終息し、

No.48以降、新たに川南町からウイルスが再侵入した、と考えていいだろう。

No.248は、豚4,837頭の大型農場だが、この農場は山の中にあり、最も近い感染農場から1.5km

離れている。この農場の感染ルートは何だろうか?

No.153(5/18)は、飛び火的に離れた、日向市に近いところでの発生。

(No.153の10km圏は、ワクチン範囲に入れられなかった。)

4.5月末の感染急増、そして終息

下のグラフは、片対数表示による、発生例数の推移。

101018_tsuno03

5月の中旬から下旬にかけて、指数的に急増し、6月上旬に急に終息した。

最終の発生は、6/5(275例目)である。

都農町には、まだ半数以上の家畜が残っていたので、この急速な終息は、ワクチンの効果による

と考えるのが妥当だろう。

ところで、5/29まで、素早い殺処分が実行されていたにもかかわらず、指数的な急増を
招いたのはなぜだろうか?

仮説1)「素早い」と言っても2~3日の殺処分では不十分で、発見の遅れた例もあるだろうから、

     感染拡大の連鎖を引き起こしていた。

仮説2)都農町では、隣接した川南町の感染農場から、常にウイルスの攻撃を受けていた

     川南町での「指数的増大」が、少し遅れて、都農町への攻撃の「指数的増大」を呼び、

     感染数の指数的増大を招いた。

101018_tsuno04

上のグラフは、川南町の発生数と、都農町の発生数の推移を重ねたもの。

川南町より1ヶ月ほど遅れて感染急増が起こっているが、グラフの傾きは川南町より緩い。

個人的には(仮説2)があっているような気がするのだが、それならば、もう少し早く感染急増が

起こってもいいように思う。

伝播がハエによるところが大きいとすれば、この遅れも説明できそうだが、真相は分からない。

5.もしワクチンを接種しなかったら…

もしワクチンを接種しなかったら、都農町ではどうなっていただろうか。

あくまで仮定の話だが、このまま感染が増大し、全家畜の85%が擬似患畜となるまで急増が続いたとする。

(参考: 川南町では、最終的に全家畜の92%(頭数)が擬似患畜となった。)

全家畜の85%は、牛3,400頭、豚10,200頭にあたるので、

擬似患畜数は、牛1,554頭、豚4,519頭増えたことになる。

仮に6/10までに、これだけの頭数が増えたとしても、「埋却地さえ見つられれば」殺処分が

極端に遅れることはなかったはずだ。(殺処分に苦労するほどの頭数ではなかった。)

そう考えると、北側(都農町、日向市)に関しては、ワクチンを使わずとも押さえ込みは

不可能ではなかったように思う。(南側は、難しかったかもしれない。)

但し、日向市の284例目のような「飛び火」はもうすこし増えただろう。

口蹄疫...現役養豚家の考え」のブログで、Cowboyさん(えびの市の繁殖農家)が、

「周辺部では家畜の密度が(川南町より)低いので、ワクチンを使わなかったとしても、

 同時期に終息できたのではないか?」という問いを投げかけている。

当時の正確な状況は不明なので、誰もこの問いに正しく答えることはできないだろうが、

つらつらと考えると、「埋却地がスムーズに見つけられるかどうか」が勝負の分かれ目では

なかったかと思う。

今回の埋却地の問題について、具体的な詳しい報告がなされるといいのだが…。

6.感染拡大の様子

(図はクリックで拡大。Google Earth 地図を含む図は転載禁止。)

農場の位置は推定によるもので、誤差があります。 その他の図は「その46」にあります。

Fmd_tsuno_06

No.48(5/7)で再侵入。 しばらくは散発的な発生。

Fmd_tsuno_07

No.153は飛び火的な発生。

Fmd_tsuno_08_2

Fmd_tsuno_09

Fmd_tsuno_10

Fmd_tsuno_11

5/29-5/31の3日間で9例の発生。続く3日間で5例の発生があった。

No.248は、山中にある大規模養豚農場。

No.247, 249, 251 は小規模農場だが、殺処分まで1週間以上かかっている。

Fmd_tsuno_12

Fmd_tsuno_13

6/5のNo.275で終息するが、このあと6/10に、日向市の飛び火(No.284)が発生した。

(10/20追記)必読

池亀 康雄 「宮崎県口蹄疫発生第6例目(水牛農場)に遭遇した臨床獣医師からの報告

(「日獣会誌 63」 p.737 ~ p.739 (2010)   PDF 337KB)

(アクセス解析)

口蹄疫について論じているブログも少なくなってきました。

今は当ブログのアクセスも少ないですが、発生中のアクセスは、下表の通りでした。

Access

(おまけ)

「東京食肉市場まつり」(10/16-10/17)に行ってきました。

101016_meat_market_s102

101016_meat_market_s103

試食コーナー(無料)はどれも長蛇の列です。

101016_meat_market_s104

「お肉の情報館」の廊下にあった張り子の豚。

101016_meat_market_s108

牛肉切り落としは、1キロパックが1,000円!

101017_meat_market_s109

こちらの常陸牛肩ブロック(値札5,200円/100グラム当たり1,200円)

は、4,000円にまけてもらいました。激ウマです。

お知らせ>本日の図表は、pdfを含め、無断転載を許可します。

      但し、 1.引用元の表記をお願いします。 2.無断での改変は厳禁です。(サイズの変更はokです。)

Kon_285996s

コンタンです。ごぶさたしています。東京もすっかり秋です。(この写真は転載禁止です。)

このブログは、当家の下僕が執筆しています。 リンクフリーです。

Hi, my name is Kontan. My servant writes this blog. This blog is link-free.

« 移動制限区域とワクチン接種区域 | トップページ | データで振り返る口蹄疫対策(2010年 宮崎) その51 埋却地の問題 »

コメント

 
明日(10/19)の「第12回 口蹄疫対策検証委員会」 合同会議出席者
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/soumu/101018.html

○ 宮崎県口蹄疫対策検証委員会委員
   宮崎大学工学部           原田 隆典  教授
   宮崎大学農学部           堀井 洋一郎  教授

○ 宮崎県庁内調査チーム
   宮崎県 県民政策部 総合政策課 永山 英也  課長
   宮崎県 総務部 行政経営課    大坪 篤史  課長
   宮崎県 総務部 危機管理課    金井 嘉郁  課長

○ 宮崎県庁内調査チーム 農政水産分科会
   宮崎県 農政水産部         押川 延夫  部次長
   宮崎県 農政水産部 畜産課    児玉 州男  課長

 
ウロンコロンさんのドキュメンタリーの再放送があります。

ドキュメント20min 「ブログにつづった口てい疫」
http://www.nhk.or.jp/20min/onair/20101004.html

10月23日(土) 午後4:00~4:20 NHK総合

 
何人かの方が、5月上旬の段階では、防疫体制が不十分だった(公的にも、各農場でも)ために、感染が拡大したが、
5月中旬以降、防疫体制が確立するにつれて、感染拡大が抑えられて来た、と書いている。

それは、本当だろうか? それならばなぜ、都農町での感染急増が起きたのだろうか?

 
都農町は、「感染経路を独自に検証して、報告書を作って配布する」 としていたが、それは実行されたのだろうか?
http://www.the-miyanichi.co.jp/special/kouteieki/index.php?id=763&paging=39

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/559283/49777080

この記事へのトラックバック一覧です: データで振り返る口蹄疫対策(2010年 宮崎) その50 都農町:

« 移動制限区域とワクチン接種区域 | トップページ | データで振り返る口蹄疫対策(2010年 宮崎) その51 埋却地の問題 »

2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ