回遊魚や浮魚の汚染は終息しつつある。:グラフで見る水産物の放射能汚染(その6a)9/30公表分まで
Radioactive cesium activity concentration in marine products after Fukushima nuclear disaster (6a) ~2012/9/30
Keyword : 水産物 海産物 魚貝 放射能 放射性セシウム 汚染 検査 結果 まとめ 地図 グラフ
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■ 底魚・根魚とスズキは、こちらのエントリーにあります。
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■ まだ作成中ですが、コメントはご自由にどうぞ。
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■ 商用目的・商用サイトを除き、図表の無断引用・転載はご自由にどうぞ。
(但し出典を明記のこと。なお説明の追記など以外の無断改変は厳禁です。)
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目次、概説、エリア区分
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1. 目次、概説、エリア区分
2. マグロ・カツオ・カジキ
3. シラス
4. カタクチイワシ、 マイワシ
5. アジ、 サバ
6. ブリ・カンパチ・ヒラマサ
7. イカナゴ(コウナゴ)、 シラウオ
8. イカ、タコ
9. サヨリ
(以下、まだ続く予定)
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概説
・ 表層~中層を回遊する魚、イカやタコ、貝類、甲殻類、海藻などの放射能汚染は、
すでに終息したか、低い値まで低下しています。
・ 一方、底魚、根魚、スズキなどについては、依然として横ばい状態が続いていますが、
茨城沖では低下しているものも見られます。
・ 東京湾の水産物については、2012/7/5採取のスズキ53Bq/kgの一件を除くと、
高い値は全く出ていませんし、数値が上昇する気配もありません。
・ 淡水魚の汚染はなかなか低下しないと予想されています。
(これについては、別のエントリーで扱う予定。)
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エリア区分
今回は、下図のようにエリア分けを行っている
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マグロ・カツオ
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【マグロ・カツオ・カジキ】 スズキ目・サバ科、 スズキ目・マカジキ科、 スズキ目・メカジキ科
Pacific Bluefin tuna (Thunnus orientalis) : クロマグロ
bigeye tuna (Thunnus obesus) : メバチマグロ
yellowfin tuna (Thunnus albacares) : キハダマグロ
albacore (Thunnus alalunga) : ビンナガ
skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) : カツオ
striped marlin (Kajikia audax) : マカジキ
Swordfish (Xiphias gladius) : メカジキ
2011年秋には、沖合500km位のカツオも15Bq/kg程度まで上昇したが、現在は1~3Bq/kg程度まで下がっている。
これらの大型回遊魚の汚染は、このままゆっくりと終息してゆくだろう。
昨年秋に、福島・茨城の沿岸捕獲のメジマグロ(クロマグロ幼魚)は30Bq/kg程度あったが、
これは、遠洋捕獲のマグロとは分けて考えるべきだろう。
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マグロ・カツオ・マカジキの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_maguro.pdf」をダウンロード
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マグロ・カツオの検査結果一覧を見ると、検出限界が20Bq/kg程度でNDと言う検査も多いが、
検出限界の低い調査も行われているために、「真の値」の推定もできていることがわかる。
これは、意図したかどうかは別として、検査態勢としては理想的な状況だ。
コメや牛肉、その他、ほとんどがNDであるような食品については、このように少数でもいいから
限界の低い測定を行って、真の値を推定できるようにするのが望ましい。
しかし、業界と行政の思惑によって、水産物を含むほとんどの食品の調査で、その態勢は
いまだに実現できていない。このことは、残念なこととして歴史に記録されるべきだろう。
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シラス
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【シラス】 ニシン亜目・ニシン科、ニシン亜目・カタクチイワシ科
young of sardines
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シラスはイワシ等の稚魚。表層を泳ぐため、事故直後に表層を広がった高濃度汚染水の影響を強く受けた。
しかしその後、シラスの放射性セシウム濃度は順調に減少した。
汚染値が指数的(片対数グラフで直線的)に低下する理由については、
Togetter「セシウムの蓄積量をエクセルでみてみよう」 を参照ください。
2012年になってから、福島、茨城沖のシラスはほとんどがNDだが、
8/11公表の茨城県の試験操業の測定 によって、北茨城沖のシラスの「真の値」を知ることができる。
これによると、北茨城沖の生シラスは 1~3Bq/kg程度、シラス干しは 2~8Bq/kg程度、
チリメンジャコは 5~25Bq/kg程度となっている。
福島沖のシラスの現在の「真の値」は、おそらく数Bq/kg程度だろう。
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シラスの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_shirasu.pdf」をダウンロード
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「水生生物における放射性物質の挙動について」 (2012/5/14 水産総合研究センター)
によると、シラスの放射性セシウムの濃縮係数は約40。(下図: P30より)
(海水が10Bq/Lなら、シラスは約400Bq/kg)
2012年8月頃の、茨城沖の海水の134Cs+137Cs濃度は0.01Bq/L程度だから、
海水からの移行では 0.4Bq/kg程度にしかならないことになるが、
北茨城沖のシラスは1~3Bq/kgあったから、残りのぶんは、底質からの移行になるのだろう。
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カタクチイワシ、マイワシ
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【カタクチイワシ】 ニシン目・カタクチイワシ科
Japanese anchovy (Engraulis japonica)
シラスの成魚であるイワシの汚染は、シラスよりだいぶ低い。これは、成長期の魚の代謝が早いためである。
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銚子沖のカタクチイワシ中の放射性セシウム濃度は 1Bq/kg以下にまで下がった。
茨城沖でも、数Bq/kg程度である。
福島沖でも、茨城沖とさほど変わらないと思われるが、調査が少ないのでわからない。
カタクチイワシは大型魚の食餌として生態系の中で重要だが、イワシを主に食べる大型魚の汚染が
これ以上進むことはないだろう。
カタクチイワシの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_katakuchi.pdf」をダウンロード
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【マイワシ】 ニシン目・ニシン科
Japanese pilchard / Japanese sardine (Sardinops melanostictus)
銚子沖のカタクチイワシは、初期にはマイワシよりだいぶ高かったが、マイワシのほうが
低下速度は遅かった。
しかし現在では、銚子沖のマイワシは 1Bq/kg以下に下がっている。
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福島県では、ほとんど調査例がない。
鳥取(境港)のマイワシ 9.9Bq/kg(大阪府の調査、5/29公表)は、おそらく誤検出だと思うけど、
こういう値を公表してそのあと何もフォローがないのは困ったものだ。
マイワシ・ウルメイワシの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_maiwashi.pdf」をダウンロード
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アジ、サバ
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【アジ】 スズキ目・アジ科
Japanese jack mackerel / Japanese horse mackerel (Trachurus japonicus) : マアジ
amberfish (Decapterus maruadsi ) : マルアジ
brownstriped mackerel scad (Decapterus muroadsi ) : ムロアジ
アジの放射性セシウム濃度はなぜかサバより高めだが、理由はよくわからない。
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下図: 全海域
マアジ・マルアジ・ムロアジの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_aji.pdf」をダウンロード
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下図: 福島以北
福島沖のアジはだいぶ下がってきたが、原発30km圏内では、現在でも10~30Bq/kg程度ある。
仙台湾~金華山沖のアジも、まだ10~20Bq/kg程度ある。
福島以北では、冬から春にかけての期間、ほとんど調査が行われなかった。漁期ではないとしても、
全くとれないわけではないと思うのだが…。
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下図: 茨城以南
茨城沖のアジは、現在は10Bq/kg以下に下がったようだ。
銚子沖のアジは、現在は1Bq/kg程度まで低下している。
茨城県では、2012/5/11に、県南部のマルアジが生産自粛となった。
(2012/11/9現在、継続中: その後、マルアジの検査が1件も行われていない。)
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【サバ】 スズキ目・サバ科
chub mackerel (Scomber japonicus) : マサバ
blue mackerel (Scomber australasicus) : ゴマサバ
サバのセシウム汚染は、それほど高くならなかった。
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下図: 全海域
マサバ・ゴマサバの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_saba.pdf」をダウンロード
2012/3/21購入の静岡産マサバ(神戸市検査)からも、9.6Bq/kgを検出している。
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下図: 福島以北
仙台湾~宮城沖のサバは、現在は1~6Bq/kg程度まで低下している。
福島沖のサバは調査数が少なく、2012年以降はほとんどNDとなっているが、
少なくとも仙台湾と同じくらいの数値はあるだろう。
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下図: 茨城以南
銚子沖~茨城沖のサバは、数Bq/kg台でしばらく横ばい状態にあったが、今夏以降は
1Bq/kg程度まで低下したようだ。
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ブリ・カンパチ・ヒラマサ
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【ブリ・カンパチ・ヒラマサ】 スズキ目・アジ科
Japanese amberjack / yellowtail (Seriola quinqueradiata) : ブリ
Greater amberjack / ruderfish (Seriola dumerili) : カンパチ
Yellowtail amberjack (Seriola lalandi) : ヒラマサ
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下図: 全海域
ブリ・カンパチ・ヒラマサの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_buri.pdf」をダウンロード
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下図: 福島以北
宮城~岩手沖では、昨年秋には100Bq/kgに達するブリもあったが、現在では10Bq/kg程度まで下がっている。
福島沖採取のブリは、今春以降はほとんどNDだが、同様に10Bq/kg程度はあるのだろう。
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下図: 茨城以南
房総~茨城沖のブリの放射性セシウム濃度は、現在では1~4Bq/kg程度に低下している。
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イカナゴ(コウナゴ)
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【イカナゴ(コウナゴ)】 スズキ目・イカナゴ科
young lancefish (Ammodytes personatus)
2011年4月から5月にかけて、福島・茨城沖のコウナゴ(イカナゴ稚魚)から、非常に高い
放射性ヨウ素・放射性セシウムの汚染が検出された。
コウナゴ(イカナゴの幼魚)は表層を泳ぐ魚で、春先に仙台湾で孵化して南下する。
その途中で、4月頃に表層を広がった高濃度汚染水の影響を強く受けた。
(汚染水は淡水のため海水より比重が軽く、最初は表層を広がった。)
しかし、2012年春のコウナゴ(イカナゴ稚魚)の放射性セシウム濃度は、福島沖で10Bq/kg程度(最高21Bq/kg)、
茨城沖で3~7Bq/kg、仙台湾で2Bq/kg程度だった。
コウナゴ(幼魚)の漁期は通常3月~5月前半だが、成長したイカナゴは底生となり、
夏季には水深20~40mの砂に潜って夏眠する。
このためイカナゴ(成魚)は底魚として考える必要がある。
2012年春の、福島沖のコウナゴ(成魚)は、30~60Bq/kg程度あった。
これ自体は高い濃度ではないが、底魚の餌生物と考えた場合は高い。
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イカナゴ(コウナゴ)の検査結果一覧(pdf)→ 「120930_kounago.pdf」をダウンロード
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【シラウオ】 キュウリウオ目・シラウオ科
Icefish (Salangichthys microdon)
昨年11月から福島県沿岸での調査が始まった。シラスよりやや高めなのは、沿岸に棲息しているためだろうか。
福島沖でもシラウオの放射性セシウム濃度は順調に低下して、現在は10Bq/kg以下と思われる。
但し、調査のなかった昨年春頃は、シラス同様に高い値だったと思われるが、永遠の謎だ。
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シラウオの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_shirauo.pdf」をダウンロード
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下図: 霞ヶ浦、その他淡水のシラウオ
霞ヶ浦のシラウオの放射性セシウム濃度はゆっくりとだが低下しており、
西浦では20~30Bq/kg、北浦では10Bq/kg以下に低下した。
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イカ、タコ
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【イカ】 頭足綱・十腕形上目
cuttlefish / squids
イカは、20km圏内の調査(検出下限:Cs計9Bq/kg程度)も全てNDになっており、
イカのリスクは十分小さい。
但し、福島件沖では数Bq/kg程度はあるかもしれない。
2012/11/6 南相馬市小高沖採取(試験操業)のヤリイカで 6.3Bq/kgあるものが見つかっている。
(その他の試験操業は全てND) JF福島公表→ http://www.jf-net.ne.jp/fsgyoren/kensakekka201209.pdf
イカの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_ika.pdf」をダウンロード
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【タコ】 頭足綱・八腕形上目・タコ目
octopus
イカと同様、ごく低い値しか検出されておらず、タコのリスクも十分小さい。
福島沖の試験操業のタコ(検出限界:Cs計7Bq/kg程度)は全てNDとなっているが、
20km圏内では数Bq/kg程度のものも見つかっており、福島件沖ではまだ数Bq/kg程度あるようだ。
タコの検査結果一覧(pdf)→ 「120930_tako.pdf」をダウンロード
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サヨリ (2013/2/14追記)
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【サヨリ】 ダツ目・トビウオ上科・サヨリ科
Japanese halfbeak (Hemiramphus sajori)
2013/2/6捕獲(2/13公表)のいわき市四倉沖のサヨリが、初めて100Bq/kgを超えた。
原因はわからないが、20km圏のサヨリはこれまで1件も調査されていない。
サヨリの検査結果一覧(pdf)→ 「130213_sayori.pdf」をダウンロード
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