« 底魚の汚染はほとんど終息しつつある | トップページ

2016年1月29日 (金)

1~4号機建屋周辺の水バランス

Tsukubai

(図はクリックで拡大します。)

■ 商用目的・商用サイトを除き、図表の無断引用・転載はご自由にどうぞ。
  (但し出典を明記のこと。なお説明の追記など以外の無断改変は厳禁です。)

1. Danraku_bar_2

   概説

1Fの汚染水が増える要因については、これまで、部分的な情報しか公表されていませんでしたが、

最近になって、いろいろな情報が公表されるようになり、それらをつなぎ合わせることに

よって、建屋周辺の水収支の全体像がわかるようになりました。

状況を全体的に見ることによって、汚染水がなかなか減らないのはなぜか、あるいは

どのような状況になったら汚染水が減るのかを知ることができます。

また、(今のところ原子力規制委員会の承認は得られていませんが、)近いうちに、陸側遮水壁

(凍土遮水壁)の運用が始まるはずです。それがうまく機能しているかどうか(あるいは問題

が起きているかどうか)も、全体の水収支をチェックすることによって確認できるはずです。

汚染水の問題は「うまくいっている」ことになっている(政治的に)ために、情報の透明性が低く

なっています。人類初めての難題に立ち向かっているのですから、そう易々とは行かないのは、

無理からぬことだと思うのですが…。エネ庁/東電自らが、失敗点を含めて、積極的に情報を

開示するようになればいいのですが。

2. Danraku_bar_2

   1~4号機建屋周辺の水バランス (2015年12月時点)

Balance_1512

注: 数字は2015年12月の平均値を、丸めたもの。

   また、地下水位の変動はないと仮定して算定している。

   (それぞれの数字の出典については、後述。)

この状況と、2013年8月時点の予測 「海側汚染水問題に関する対策(pdf)」(下図)とを

比べると、サブドレンの汲み上げ量が、まだ予測の半分程度しかないことがわかる。

130808_yosoku

サブドレンの水位設定(ポンプ起動水位)は、運用開始時(2015/9/3)の、OP+6,500から

段階的に引き下げられ、2015/12/22からはOP+4,536 (2016/1/16からはOP+4,186)の

設定となっているが、地下水ドレンポンプの水位は OP+3,200の設定だから、これよりも

まだだいぶ高い。水位設定は今後も引き下げられてゆく予定だが、建屋の水位を下げて、

様子を確認しつつの作業となるため、地下水ドレンの水位に近づくまでは、まだだいぶ

時間がかかりそうだ。 (T/B水位は、2016年1月時点で、OP+2,500~3,000程度あり、さらに

引き下げないと、サブドレン水位も下げられない。)

東電/エネ庁が、サブドレン水位を下げれば、建屋流入量、地下水ドレン汲み上げ量を

さらに減らすことが出来る、と説明していることは嘘ではないが、当面は、なかなか下がって

来ないと思われる。

3. Danraku_bar_2

   山側からの地下水+雨水の量 (数字の出典)

2015年12月時点の量を、1,090m3/日と推定しているが、これは、それぞれの汲み上げ量、

建屋流入量、海への透過量の合計値として算出した値である。

(上記の2013年8月の想定では 1,000m3/日となっているから、おおむね近い。)

この数字は、地下水位の変動はないと仮定した場合の数字だが、サブドレン水位の引き下げ

によって、建屋周辺に蓄えられた地下水の量は少しづつ減っているから、実際の数字は、

1,090m3/日よりも少し小さいはずである。

2015年12月の浪江の降水量(月)は 46mmで、平年値の 41.4mmとおおむね近かった。

しかし、浪江の年間降水量(平年値)は 1,511mmで、月平均値 126mmの1/3程度しかない

ことには留意を要する。(下図:浪江 降水量(平年値))

Namie_heinen

降水量が増え、山での雪解け水が増える3月以降は、さらに水量が多くなるはず。

4. Danraku_bar_2

   地下水バイパス (数字の出典)

ここでは、地下水バイパスによる削減量として 30m3/日を採用しているが、これは、

東電による評価値である。

2015/10/1の東電資料(pdf)で、HTI建屋止水と地下水バイパスの稼動により

  「合計80m3/日程度」の建屋流入量の抑制が認められる、と評価している。

  (これが、最終的な評価。)

■ 一方、 2015/7/31の東電資料(pdf)で、HIT建屋の止水による地下水流入雨維持抑制効果を

  「約50m3/日」と評価している。

■ この差が地下水バイパスによる効果だとすれば、地下水バイパスによる流入抑制効果は

  「約30m3/日」ということになる。

  (ちなみに、経産省のサイトには、「地下水バイパスの効果により、建屋への地下水

   流入量は約80トン/日低減」 との記載があるが、これは誤解を招く表現である。)

地下水バイパスの汲み上げ量は公表されていないが、排水量は毎回公表されており、

東電HPにまとめがある。

Bypass

2015年12月は、5回の排水(合計8,579m3)があり、7日間隔で排水が行われているので、

これを35で割ると、平均245m3/日の排水量となる。

汲み上げ時と排水時でタイムラグはあるが、便宜上 250m3/日を汲み上げ量とする。

このうち、地下水バイパスによる削減量 30m3以外の 220m3/日は、地下水バイパス

汲み上げによる、周辺からの吸い寄せ効果ということになる。

5. Danraku_bar_2

   サブドレン汲み上げ量 (数字の出典)

日ごとのサブドレン汲み上げ量は、規制庁面談資料の中で報告されており、

それをグラフにすると下図のようになる。

Subd

データまとめ(xslx)→ 「sub-d_chikasui-d.xlsx」をダウンロード

(データ出典へのリンクも、エクセルファイル中にあります。)

2015年12月(11/30 15:00~12/31 15:00)の汲み上げ量は 13,780m3、平均 444.5m3/日

となるので、440m3/日 をサブドレン汲み上げ量としている。

6. Danraku_bar_2

   建屋流入量 (数字の出典)

2016/1/18から、毎週月曜に 「建屋への地下水ドレン移送量・地下水流入量等の推移」

という資料(2016/1/25ぶん)の公表を始めており、このグラフ中に「①建屋への地下水・

雨水等流入量」があるので、このグラフ読み取り値をもとにする。

12/3, 12/10, 12/17, 12/24, 12/31 の値(7日平均)を、それぞれ 170, 155, 240, 110, 170 と

読み取ると、平均 169m3/日となるので、170m3/日を、建屋への地下水+雨水の流入量

としている。

尚、2015/10/30の規制庁面談資料 「建屋への地下水・雨水等流入量 算出方法(pdf)

では、この算出方法が説明されている。

7. Danraku_bar_2

   ウェルポイント・地下水ドレン汲み上げ量、建屋移送量 (数字の出典)

日ごとの地下水ドレン汲み上げ量は、規制庁の面談資料で、サブドレンと同時に公表されている。

Chikasuid

データは、サブドレンと同じファイル中にまとめてあります。

これによると、12/1 15:00~12/31 15:00 の「集水タンクへの移送量」は、合計1,175m3、

平均39.1m3/日となるので、地下水ドレンから処理設備への移送量は 40m3/日とする。

また、規制庁面談資料の「たまり水の貯蔵及び処理の状況について(資料2)」(毎週金曜)

に、ウェルポイント・地下水ドレンから「建屋への移送量(1週間分)」が公表されている。

これによると、11/26 0:00~12/31 0:00(5週分)の移送量は、合計 14,110m3、平均403m3/日

となる。 ウェルポイント・地下水ドレンから建屋への移送量は 400m3/日となる。

上記の移送量合計 440m3/日が、ウェルポイント・地下水ドレンからの汲み上げ量である。

前述の「たまり水の貯蔵及び処理の状況について(資料2)」には「その他の建屋移送量

も公表されている。これは主に、①トレンチからの水の移送、②タンクエリアの汚染雨水

(比較的汚染度の高いもの)を、建屋に移送した量である。

11/26 7:00~12/31 7:00(5週分)の移送量は、合計 540m3、平均15m3/日となる。

ここでは 20m3/日としている。

8. Danraku_bar_2

   多核種除去設備の薬液注入量 (数字の出典)

「汚染水」というわけではないが、このほか貯留水の増える要因として、ALPS等処理時の

薬液注入(Sr化合物等の共沈を作って、フィルターで除去できるようにするための薬液)

がある。この量も前述の「たまり水の貯蔵及び処理の状況について(資料2)」で公表されて

おり、11/26 7:00~12/31 7:00(5週分)の注入量は、合計630m3、平均18m3/日となる。

ここでは 20m3/日としている。

これらの数字をもとに、汚染水(貯留水)の要因別の増加のグラフを作ると、下図のようになる。

Osensui_uchiwake

データまとめ(xslx)→ 「ensui_graph.xlsx」をダウンロード

グラフ(pdf)→ 「ensui_graph_160527.pdf」をダウンロード

9. Danraku_bar_2

   海側遮水壁を透過する地下水 (数字の出典)

実測に基づくものではないが、設計上の評価値として 10m3/日とされているので、とりあえず

その数字を採用している。

出典は、2015/12/18 特定原子力施設 監視・評価検討会資料 のP.35。

(ちなみに、30m3/日という評価値もどこかにあったはず。)

取水口内北側(東波除堤北側)の海水のSr-90濃度は、海側遮水壁の閉合前は 30~60 Bq/L

程度あったが、閉合後は 1 Bq/L程度に低下している。

Kouwannai2

その他港湾内海水のグラフ(pdf)→ 「kouwannai.pdf」をダウンロード

この比率で、流出する地下水も減ったと評価すれば、300~600m3/日の流出量が

10m3/日 に減少したことになるから、おおまかな評価としては、おかしくない数字とだと思う。

10. Danraku_bar_2

   地下水ドレンの汚染源

地下水ドレンのH-3濃度が高い(数千Bq/L)ために、汚染水が急増しているが,この汚染の

由来は今のところよくわかっていない。毎日何百トンも汲み上げてもなかなか濃度が下がらない

ため、今でも建屋から漏れているのでは?と心配する人も多い。(もちろん、その可能性もある。)

しかし、2013年の調査では、2号機、3号機の海水配管トレンチ滞留水のH-3濃度は、

200万~1,000万Bq/L程度と極めて高かったから、こうした汚染水が地中のどこかにあると

すれば、なかなか汚染が下がらないだけの汚染源となりうるだろう。現状では、いずれの

可能性も否定できない。

(参考)トレンチ水の放射能濃度(xls)→ 「Sr_tateya.xls」をダウンロード (2014/9/19更新)

11. Danraku_bar_2

   海側遮水壁の末端

地下水ドレンの水位は、OP+3,200(ポンプ停止水位)~OP+3,400(ポンプ起動水位)の間で

管理されているが、この水位は、海側遮水壁の閉合前よりもかなり高い。

海側遮水壁の末端部では、当然、隣接するエリアに向かう地下水の流れが生じている

と考えられる。

凍土遮水壁の運用が遅れれば、4m盤から、隣のエリア(物揚場)に汚染が移行する可能性も

あるだろう。

2016/2/10 追記

東電作成による地下水収支(2015/11/6~2016/1/7を対象期間として評価)

出典:2016/2/1 規制庁面談資料

Hyouka

海側遮水壁を透過する地下水の量を、地下水位の上昇を考慮して、30m3/日と評価し直している。

« 底魚の汚染はほとんど終息しつつある | トップページ

コメント

サブドレンのH-3は1号機から地下に漏れていると思います。それは、1号機原子炉建屋の水位と1号機サブドレン(No.1)の水位の変化が連動しており、水理的に繋がっていると考えられるからです。

以下は記事に関しての直接のコメントでなくてすみません。

お知らせ
福島第一原発周辺のモニタリング・ポストで事故直後に記録されていたガンマ線スペクトル・データを読み取り、放出された放射能の種類やその変化、移動について丁寧に考察しました。その結果、定説化している従来の事故分析は、多くの重要な点において見当違いであることが明らかとなりました。その概要版をブログにアップしましたのでお知らせします。

「福島第一原子力発電所事故の考察(モニタリング・ポスト編)」
http://ashidakouto.blog.fc2.com/blog-entry-1.html

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/559283/63133761

この記事へのトラックバック一覧です: 1~4号機建屋周辺の水バランス:

« 底魚の汚染はほとんど終息しつつある | トップページ

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ